前回に引き続き、古典落語「鼠穴」について記述していきます。
火事で自身の構える店を失い、兄からも冷遇された竹次郎に、愛娘のおよしはこんな提案をします。
「あたし、吉原っていうとこのお女郎さんになる」
それを聞いた竹次郎は仰天します。まだ七歳の娘が遊郭の話をするとは・・・。なんでも、焼け出された後に移り住んだ長屋のご近所の奥様連中から、お金になるところはどこか?と聞くと、吉原だと教えられたというのです。「まだ、七つの娘になんてことを吹き込むんだ」と憤慨する竹次郎。
しかし、およしは
「あたしが作ったお金で、おとっつぁんがまた商売を始めて、お金がうんとできたら、あたしを迎えに来てくれればいいじゃないか」
そんな愛娘の言葉に竹次郎の心は揺れ動き、その提案に乗ってしまうのです。
こうして、およしを吉原に売った竹次郎でしたが、およしはまだ七歳なので、花魁(おいらん)などの身の回りの世話をして、しきたりや花魁としての在り方を教わる禿(かむろ)ということになりました。その代金が二十両でした。
竹次郎はおよしを売って得た二十両を懐に入れ、帰路につこうとしますが、帰りしなに男にぶつかってしまいます。「気をつけろい!」などと怒鳴られ、頭を下げますが、次の瞬間、懐に入れたはずの二十両がないことに気づきます。そう・・・男はスリだったのです。
「もう私は駄目だ・・・自分の娘を売っぱらってまで手に入れた金を盗まれるなんて・・・」
ここまでくると、悲惨を通り越して、涙さえも出ない竹次郎。傍にあった木の枝に自分の帯を巻きつけて、首をくくり、踏み石を蹴飛ばします。
次の瞬間、はっ!と目を覚ます竹次郎。目の前には兄が心配そうにして彼を揺り起こしていました。
「竹や、お前、大丈夫か?」
兄の問いに竹次郎は「はぁ・・・」と答えるのが精一杯です。
どうやら竹次郎は夢を見ていたようでした。兄は竹次郎があまりにうなされていたので、彼に声をかけていたのです。兄は竹次郎に「どんな夢を見たのか?」と聞きます。
竹次郎は土蔵の鼠穴から火の手が入って、お店が全焼したこと。兄に冷たくあしらわれたこと。娘を吉原に売ったこと。その金をすられたこと。自分は首をくくったことなどを説明します。
「・・・なんだい、お前の夢の中じゃ、わしはまるで鬼のようだね・・・。お前まだ、わしになんぞ恨みが残ってるんじゃないか?」
と兄も心配になるほどでしたが、竹次郎も「そんなことは滅相もない、鬼・・おに・・お兄さんです」などと言いますが、ふと疑問が浮かびます。
「私はなんでまた、あんな夢を見たんだろう・・・?」
と訝しがる竹次郎に兄は大いに笑ってこう答えます。
「火事の夢っていうのは、逆夢(さかゆめ、見た夢とは逆のことが起こるといわれる夢)と言って、実に縁起が良いんだ。この春からは、お前の店は燃え”盛る”ように大きくなるぞ」
と満足げに頷く兄に竹次郎は
「なるほど、出掛けに土蔵の鼠穴を心配していたから・・・」
と納得すると兄は笑いながら、こう言いました。
「はっはっはっ!そりゃ、お前。夢は”土蔵(五臓)の疲れ”だ」
と、まあ長々と続けてきましたが、以上が大まかな「鼠穴」のお噺になります。
最初に、夢というのは五臓の調子が悪い時に見るものという伏線があり、竹次郎が見た夢は、土蔵を心配するあまりに見た夢だった・・・つまりは「土蔵の疲れ」というサゲ(噺の落としどころ、オチ)に繋がる訳です。
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